別府温泉保養ランド

別府温泉保養ランドに入浴に来た。

この温浴施設の特筆すべき点としては紺屋地獄から直接引いている泥湯が挙げられるだろう。

泉質豊富な別府大分においてもなお貴重な性質の温泉である。

恥ずかしながらこの度初めて泥湯に触れる筆者は、怖さ半分、まあネタにはなるかという気持ち半分で、あまりポジティブな感情を泥湯に抱けていないのが本心である。

だがしかし、実際に入浴せずに毛嫌いするというのは、温泉に文字通り浴びるように入浴してきた自認のある温泉人のすべき行いではないだろう。

泥湯には肌の引き締め効果もあるようだし、気を引き締めて挑もう。

混浴あるらしいし。

 

 

現在、別府までの高速バスのチケットを往復分買うと、無料で亀の井バス2day乗り放題チケットがついてくる。

経営やっていけるの?大丈夫?色々あってやけになってる?

地獄の沙汰も金次第というが、別府の地獄はそんな拝金主義の地獄とは一線を画しているようだ。捨てる地獄あれば拾う地獄あり。ありがたくチケットを使わせていただく。

別府駅から亀の井バス42番に乗り紺屋地獄前で降りると、道路の向かいに「紺屋地獄 別府温泉保養ランド」の看板がある。

看板まで行き、左手に見える建物が目的地だ。

看板辺りから硫黄の臭いが漂いだすが、風呂に入る頃には慣れるので安心してほしい。

脱衣所を通り抜け、風呂場に入るとまずコロイド湯がある。

広々とした風呂に乳白色の温泉が満ちていて、久々の温泉らしい温泉に2時間ちょっとのバス旅で緊張した筋肉がほぐれていく。

この他滝湯や蒸し湯もあったが、今回は目的地へと気が急くあまり、入りそびれてしまった。

お目当ての泥湯に着く。

大きめの開放的なものと、少し小さめで森に隣接しているものがある。どちらも露天ではあるが、開放的な大露天と隠れ家的な小露天といった趣だ。どちらの風呂も円形に近く、円の半径を示すような形で背の高い木の衝立が設置してあり、木の柵で衝立の反対側の外縁まで仕切りが作ってあった。

なるほど、温泉を共有しているので混浴ではあるが、見られるのが嫌な人は衝立の方に留まっていれば見られずに済むシステムらしい。そして木の柵の方では男湯ユーザー、女湯ユーザー関係なく顔を見合わせながら話せるわけである。

初めて混浴の風呂を見たが、性差関係なく一つの湯船に浸かれることは、現代の性差への意識の変わり方とマッチする部分があって良い試みなのかもと思った。

筆者が泥湯を訪れたのは13時ごろで、案の定視界に入るのは男湯ユーザーだけだったが、奇妙な熱量みたいなものが感じられて面白かった。夜は8時まで入浴可能らしいので、恋人たちなどで入浴する際は暗くなってからがおすすめかもしれない。

肝心の泥湯だが、温泉の全てが泥というわけではなく、風呂の底に泥が沈殿しているという形であった。沼に浸かるような形をイメージしていたので一安心といったところ。

泥の質感は滑らかで、食べ物に例えると求肥に近い。試しに片腕にだけ泥を塗り、少し時間を置いて左右の違いを確かめてみると、確かに泥を塗った方の腕はツルツルになっている実感がある。タッパーに詰めて持って帰りたい。

風呂を上がり脱衣所を越えると畳敷きの休憩所があり、カップルや親子連れが思い思いにくつろいでいた。彼らの都会では見ない気の抜け方に別府に戻ってきた実感を得た筆者は、太陽が燦々と照らす別府の街へ亀の井バスでくだっていくのであった。

 

別府温泉保養ランド、入浴してみれば、なんのことはない、別府の気持ちいい温泉の一つであった。

混浴と聞くと行きづらいかもしれないが、夜や朝早くに時間をずらしたりして、みなさんも泥湯を試されてはいかがだろう?